妻が専業主婦やパートの世帯で、妻の年収が「103万円以下」なら夫が税負担の軽減を受けられる「配偶者控除」。103万円内に収めようと就労時間を控える女性が多いこともあり、廃止を視野にした見直しと報じられていました。廃止によって得られた増収分を財源にして、子育てや介護など必要な支援に回す方向と認識していましたが、出てきた結論は逆の「拡充」でした。
制度が設けられた1961年は高度成長期、専業主婦が多数派の時代。しかし、90年代半ばに共働き世帯が逆転し、2015年では専業主婦世帯の約1・6倍に増えています。また、日本企業の特色だった終身雇用制度や年功序列制度は維持が難しくなり、夫が一つの企業で働き続けられる保障はありません。こうした背景から、女性会館の講座では「1人の収入に頼らず、複数の収入にすることが家族の最大のリスク回避策になる」と説明しています。
配偶者控除以外にも、社会保険や国民年金制度など主婦の就労を取り巻く「壁」は幾重にもあります。もうそろそろ、配偶者の有無や配偶者の勤務先の規模に左右される「壁」を飛び越えて、主体的に働く時代がきているような気がします。そのためには、妻の働きを「家計の足し」ではなく、共に生計を支える1人としてとらえる、夫の意識改革が欠かせません。家事・育児をうまく分担することも第一歩。それぞれの家族のやり方で新しい一歩を踏みだしてほしいと思います。

2017年1月5日からの開館にあわせての展示