静岡流そば活のススメ
みなさん、年越しそばを食べましたか?ところで、静岡市とそばには深い関係があるのをご存じでしょうか?静岡出身の高僧「聖一国師」は中国(宋)からお茶の種を持ち帰り、「お茶の始祖」と呼ばれていますが、博多では「うどん・そばの始祖」です。聖一国師は製粉技術を日本に広め、一説には大晦日に貧しい人にそばもちをふるまったことから、年越しそばを始めた人とも言われています。静岡市はお茶だけじゃない、「そばの始祖」の出身地でもあるのです。
静岡市の中山間地(オクシズ)には、昼夜の寒暖差が大きく、川霧が立つような所があってよいお茶が採れますが、このような所はそばの栽培にも向いています。江戸時代にはソバの栽培が盛んでしたが、よりお金になるお茶には負けてしまいました。農家の自家用になり、品種改良されなかったソバですが、そのわずかに残った昔ながらのソバがいま在来種として注目されています。
この秋、在来ソバの復活に取り組む「大川100年そばの会」の方々と在来ソバの種まき、刈入れ、脱穀、そば打ちを行いました。痩せた土地でも育つソバの生命力には驚かされ、最終日にはソバの香りに包まれワクワクしながらそばを打ちました。ゆで上がったそばをかみしめるたびに畑一面のソバの花やワイワイ言いながらの収穫を思い出しました。地元の人と交流しながら在来ソバを育てていく、このオクシズにしかないイベントは来年度も続いていきますので、興味のある方は広報紙を要チェックです。
そばは面白くて奥深い食べ物です。というのも品種や産地だけでなく、挽(ひ)き方、粉の配分、打ち方、切り方によって、香り、弾力、のどごしが違うからです。静岡市には自家製粉、自家製麺にこだわるそば職人がたくさんいて、そばを打つ彼らのたくましい腕には引き寄せられます。一押しのそば屋は在来の十割そばが食べられる「たがた」。他にも古民家で活気あふれる「つむらや」、徳川慶喜も通ったという「安田屋」などがオススメです。
「たがた」福井在来十割そば 「つむらや」もりそば
2016年10月に、上記のそば屋も参加して「第1回静岡はしご蕎麦」というイベントが開催されました。マップ片手にそば屋をはしごしてスタンプを集めるというものですが、早くも第2回が計画されています(2017年2月頃開催予定)。お茶や日本酒とともにおいしいそばをちょこっと食べ、また次の店へ行く・・・。いくつものお店のそばを食べ比べることができますので、ぜひ皆さんも自分好みのそばを見つけに出掛けてはいかがでしょうか。(文・写真=滝澤静香)
※植物は「ソバ」、食べ物は「そば」と表記しています。
PROFILE
たきざわ・しずか
静岡市出身。以前は鉄道会社や大学に勤務経験あり。横浜、名古屋など県外に住んでいたが、数年前に静岡に戻った。今は、日本茶インストラクターとしてお茶の淹れ方教室などを担当する。旅行が大好きで、20世紀中に47都道府県制覇を実現。旅先では○○集め、○○巡り、○○カードという言葉に弱い。